[琵琶読本] 覆手の材料

 覆手(ブリッジ)の材料は「島桑」、又は「薩摩桑」らが一番よろしく、それも柾目に限る。私は柾目以外の材料では絶対に作らない。板目は駄目である、板目で作った音はボンボンと大きな音はするがしまりがない。したがって力がない、そして音に味がない。

柾と杢目の差
 柾目でも大きな音に作ろうと思えば容易にできるのだから、腕にのある正直な製作師は柾目を使う事と思う。
 また覆手に「地桑」を用いることは感心出来ない、けれども近来所々で「地桑」を用いた覆手を見受けるがこれには二つの理由が発見される。

一、仕事がし易い
二、木に締まりがないから音がボンボンする。そこで胴を浅く掘って手を抜いて、その浅いが為の音の小ささを補う

 しかしこれは決して完全な仕事ではない。また忠実な仕事ではない事は勿論である。これを調べるには丁寧に作った島桑材の品と地桑で作った品とを一人前の先生が弾き比べれば直ぐ判る。
 中には稀に地桑でも好個(※1)の覆手材料品はあるが、これは実に稀なんだから大体において地桑の覆手はよくないと思えば間違いない。

※1) 好個(こうこ) 丁度良い、適当なこと

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