不言実行という言葉があるが、その実際を模範的に示す者は実に聴衆である。”例えば我々が”こうしたい、ああして欲しいと注文を付けたり、または憎まれ口を叩くのは内心琵琶がかわいいためで、琵琶と離れることのできない情愛のある人である。ところが聴衆はそうではない、嫌ならさっさと去ってしまう。そこでうちわの意見と聴衆の心持ちとこれをよく掴んで初めて盛大にもなる。私はこの意味において澤田正二郎(※1)の半歩主義に共鳴する者である。
高踏的はいけない。しかし通俗に迎合することは尚更いけない。
※1)澤田正二郎[1892-1929](さわだしょうじろう) 大正から昭和初期に活躍した大衆演劇の人気役者。劇団新国劇を創設して座長をつとめ広く親しまれた。昭和4年没
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後悔は先に立たず