[琵琶読本] 芸の角

「丸くとも一角あれや人心」という古人の句があるが、なかなか味のある言葉だ。今これを弾奏のほうへ移して考えてみるとはなはだ得るところがある。弾奏はギスギスした角ばかりのものは上出来でない。さりとてなだらかな一方で少しも角のないのもまた不出来である。
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[琵琶読本] 読み方を正しく

 発音の他にもうひとつ注意せねばならないのは読み方である。正しく読む中にもまた、仏語(仏教用語)は仏語としての読み方があるし、漢語は漢語としての読み方もある。
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[最近琵琶発達史] はしがき 作 小室汀月

掲載に寄せて
本書は、大正11年[1922]8月に刊行された登文閣「現代琵琶人名録」巻末に附した寄稿文です。執筆は主任編集者の小室汀月氏、人名録そのものが約千名を網羅した圧巻たる取材内容なのですが、本書はそれに附するにふさわしき詳細な歴史的記述が書かれています。決して読みやすい文章とは言えませんが、当時の琵琶人だけが知りうる貴重な記述であり、僭越ながら仮名使いを現代語に直して読みやすくしてここに不定期連載させていただきます。先のご好評いただいております吉村岳城先生の「琵琶新聞」同様、ご愛読していただけたら幸いです。 文責 藤波白林

はしがき
 往年、米国のグラント将軍が日本に来遊した際、時の文部大臣森有礼君の紹介で薩摩琵琶の弾奏を聴き、非常に感賞して「なぜかような好楽器を一般学校の教科に加えさせて士気作興の用に供しないであろうか」と痛惜したそうである。また、有礼君も予て琵琶を以て一般学校の教科に加えたい志があったのでわざわざ鹿児島より斯道に堪能な士を二十有余人というもの呼び寄せた。 Continue reading

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[琵琶読本] 発音についての注意

発音には充分の注意を払っていただきたい
 発音について、かつて私にこんな事を言った人があった。
「一度や二度ぐらい聴いて分かるような歌い方では駄目だ、度々聴いているうちに分かるようになるのが良い」
 これを聞いた私は、あんまり馬鹿げているので開いた口が塞がらなかった。
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[琵琶読本] 歌のうたい方について

 確か西郷南洲(隆盛)翁だったと記憶しているが、「人と語るのに語尾に力のこもっていない者は軽薄者である」と言ったが実に至言(※1)である。また古人は「終わりを完う(※2)する」ということを教えている。 Continue reading

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[琵琶読本] 美声家の不注意

 昔から「一声ニ節」といって声は大切なものとされてはいるが、実際声の美しい人は1割方利がある。けれども美声家には油断が多い。油断の結果が知らず識らず邪道に陥る。これは自惚れと梅毒(かさ)つけとが人間につきものである以上免れ得ないのかもしれない。 Continue reading

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交響曲 日本の城 [1968]

錦穣先生が”自分がオーケストラの仕事をした”、と家庭に入り子育て奮闘中の藤波に伝えたことがありました。それがこの曲、小川寛興作曲の交響曲 [日本の城]です。明治100年を記念して製作された本作の作曲者、小川寛興は私たち昭和30年代生まれ組からすると「月光仮面」や「仮面の忍者赤影」のテーマ曲を作った人として認識しています。錦穣先生が演奏しているのは第四章「炎の城」、炎に包まれる城を琵琶で表現しています。

[youtubeより 交響曲 日本の城 第三/第四楽章]

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[琵琶読本] 声の養生と修練について

 声の養生ということについては、すべて声を使う人達はみな相当に注意を払っているが、その養生法は人々によって相違があるのでこの方法が良いとは一口には言えない。例えば昔からナスの漬け物は咽喉に悪いと言われているが、私は平気である。 ーもっとも私は生来の悪声であるからこれ以上悪くならないという点もあるかも知れないがー Continue reading

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[琵琶読本] 文法と会話

 弾法には「切り」、「中干」、その他にいろいろな手がある。それを私が以前出版した弾法図解を見て短い手だと言った人もあったし、長すぎると言った人もあったので、私は世の中はさまざまだと思った。
 そして、私の弾奏の時にその弾法図解と首っ引きで対照、「怠けましたね」とか「要領を使った」とか言った人があった。はなはだしいのは某大家などわざわざ拙宅まで押しかけて「君が弾法でしっかりやってもらわないとならんのに、あんなに怠けては困る」とカンカンになってやってきた。こうしたことがあったので、私はこの機会をもって後進にちょっとお話しさせてもらう次第である。 Continue reading

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[琵琶読本] 絃に対する不注意を戒む

 薩摩琵琶を弾くときは諸君も知る通り、押し干が多いだけに多く絃を締める。その締めるのには木でできた柱と弦と擦るのだからはなはだ傷みやすい、そして三味線の如く絃を爪で抑えるのではなく、指の腹を使うから汚れやすい。そこで常に絃を新しく取り替える必要があるが、新しいと伸びやすい。しかし古いと伸びるだけ伸びきっているからその点は安心である、そこで古いままの絃で以って弾奏するという具合になる。これは未熟な時代には誰もがやっていることであって珍しくはないが、古い絃を用いる為に往々ににして弾奏中に絃を切る、その結果弾奏の気分を破壊する。 Continue reading

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