使用楽器について

現在我ら母子が弾いている楽器、錦琵琶について
左が現在白林が弾いている楽器で錦穣先生が錦琵琶創立初期から主に弾いていた琵琶、通称”桜唐草”。右が母藤波桜華が所蔵する3点継の錦琵琶で2面とも吉村岳城師昭和10年頃の作と言われているものです。両方とも最初は錦と書かれた銀版が貼られていました、その意味で右の母の琵琶が製作時からのオリジナルです。左は錦穣先生自身の発注、右は花嫁修行にと琵琶を習いに来ていた錦穣先生と同年のさる社長令嬢にそのご両親が「娘に最高の琵琶を与えたい」との要望で作られました。御蔵島産の島桑、舟側は欅ですが未だに寸分の狂いなく見事な作りです。対して左の”桜唐草”は錦穣先生の愛器として重要な演奏会でほとんど弾かれ、昭和20年代は腹板に花の絵が描かれたりしましたが母の入門した昭和30年頃に左甚五郎の流れを汲む彫刻師の手で左右に中央に桜を配した唐草模様が彫られました。

黒澤隆明著 世界楽器大辞典(1972)p297より抜粋

(左写真参照)しかしこの琵琶は錦穣先生が亡くなる月の昭和48年4月に面が割れてしまい、石田不織氏により桑の腹板と覆手が新たにされ、水藤家に戻ってきたのは錦穣先生が亡くなった後でした。錦の字も由来の唐草模様も消えた琵琶はそのまま母藤波が預かることとなり、しばらく五十嵐家にありましたが平成の初めに水藤家に戻されました。これが二代目の水藤五朗氏が亡くなった後、今度は私白林が水藤桜子さんより譲り受けました。

これら2面の琵琶は非常に重い材で作られていて80年以上経った今も重量が4kg近くあります。
しかし、ほぼ同寸ながら音色はまるで違います。是非その違いを劇場でお聞き頂きたく存じます。

Posted in その他コラム | Leave a comment

コメントを残す